30にしざわ えいじ演出家、JAM SESSION主催。1971年東京生まれ。ギリシャ喜劇やシェイクスピア、歌舞伎などの古典から現代劇まで、演劇ならではの力強い表現を心意気に活動中。主な演出作品、『女の平和』『わが町』『四谷怪談』『阿部定の犬』『フランドン農学校の犬』など。シェイクスピアでは『ヴェニスの商人』『ヴェローナの二紳士』などを手掛ける。現在、日本演出者協会理事。みなさんこんにちは、監修の西沢です。役割といたしましては、おもに演出家のそばにいて、全体のプランや稽古の進行などについて、あーだこーだと助言するのですが、学生にとっては時には目の上のたんこぶ、混乱させたり、抵抗勢力になったりしながら、一緒に本番を目指す、という楽しいお仕事です。で、その立場からパンフレット用のコメントをお願い、と言われ、この原稿を書いているのが8月末なのですが、これがなかなか筆が進ず困っている。締め切りも過ぎたから担当の船場さんもきっと困っている。だって稽古場に行けていないのですから!コロナ感染対策として大人数での集合を避けているため、稽古そのものをあまりやれていないのが現状。はたして何を書いたらいいものやら。しかし、そんな私の嘆きなんてなかったかのように、本年度メンバーたちはへこたれない。キャスト・スタッフ共に、この状況の中で、とにかく今出来ることをやろうとしているのを感じます。頼もしいなあ。若さっていいなあ。そのしなやかさで、時代のムードも変えられるんじゃないかなあ、と彼らを見ていると期待してしまう。演出家によると、今年の作品の隠しテーマは、「物語に抗う」ということらしい( 本番で変わっていたら失礼 )。若い恋人たちが悲しいラストを迎える『ロミオとジュリエット』。この結末は変えられない。変えようはないけれど、せめて運命に対抗するロミジュリがあっても良いのではないか。ロミオが死なずに済むかもしれないし、ジュリエットが幸福をつかむかもしれない。そんな可能性を思い描くのは自由だろう。あり得ないなんてことはない。常識を疑い、世の中の当たり前を飛び越えていくのが若者の特権なのだから。思う存分、物語に抗ってほしい。と、推測だけで勝手に大風呂敷を広げてしまったが許してください。こんな時期にリスクをしょって、わざわざ芝居なんかやるのだから、それぐらいの夢を託したっていたっていいじゃないか。みんな誰もがしあわせになるために生まれてきたのだ。もう悲劇だけでは終わりたくない。その希望を、あなたたちの舞台で証明してくれ。頼むぜMSP。監修西沢栄治
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