コラプターズの由来 の目も何か新しい病気にかかれば、古い病気が治るだろう。』 このままでも意味はきちんととれていますが、これを検討会にかけて最終的に以下のようになりました。『元気出せ、ロミオ。燃え上がった炎がほかの炎を飲み込むように、新たなやけどがお前の痛みを和らげるんだ。お前の目も新たな光に灼かれれば、古いやけども癒えるだろう。』 前後でどこが変わったかおわかりでしょうか。まず、火が火を消す、という表現に少し違和感があるため「飲み込む」という言い回しに変更。さらにanguish、painをこの「火」という言葉と関連付けたいということで「火傷」とその痛み、という表現に変え、さらに最後の言い回しも「灼かれる」という言葉を使って、火傷という前の台詞を受けた表現にしました。 このようにして違和感の正体を探り、修正を加えるという作業をすべての台詞に対して施します。第一幕から順に下訳を読み、何かに引っ掛かりを感じればその場で修正を提案するのですが、これが実はなかなか勇気の要る行為なのです。進行を妨げてしまう、そして他人の下訳に口を出す申し訳なさ。漠然と感じた違和感を言語化する難しさ。そしてその違和感を理解してもらえるかの不安。しかし自分が今ここで指摘しなければ、その違和感は誰にも拾われず、台詞はそのまま観客に届いてしまいます。たとえ指摘されなければ気付かないような点であっても、納得のいく言葉を作れた時の達成感は本当に大きいです。このようにしてつくられた部員たちの必死の思考と妥協と自己満足の結晶が上映台本となります。観劇にあたり演技や音楽、舞台美術、演出をお楽しみいただく中でふと、「今の台詞素敵だな」と感じていただけたなら、翻訳チームとしてこれほど光栄なことはありません。 最後になりますが、台本製作に際してご協力いただいた皆様にこの場を借りて深く御礼申し上げます。お忙しい中下訳制作や検討会に参加してくださった井上先生、演出宮西さん、演出補佐豊田さん、プロデューサー牧さん。あらゆる相談に乗ってくださった前年度コラプターズチーフ磯貝さん。そして完成までともに走り切ってくださったコラプターズの皆様。頼りない私を支えてくださり本当にありがとうございました。 そろそろ開演のお時間です。それでは皆様、明治大学シェイクスピアプロジェクト第18回記念公演『ロミオとジュリエット』どうぞごゆっくりお楽しみください。(田村小春 農2)19メンバー紹介
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