第18回 明治大学シェイクスピアプロジェクト ロミオとジュリエット
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 紳士淑女の皆様、本日は明治大学シェイクスピアプロジェクト第18回公演『ロミオとジュリエット』にようこそお越しくださいました。今年度、学生翻訳チームコラプターズのチーフを務めさせていただきました、農学部2年の田村小春と申します。昨年度からコラプターズ兼舞台美術部員としてMSPに参加し、その時は一年後自分がこのような立場でこの原稿を書くことになろうとは想像すらしていませんでした。明治大学140周年記念公演という特別な機会に立ち会えたことを心より喜ばしく思います。 学生翻訳チームという名の通り、我々の仕事はシェイクスピア劇の原文を翻訳し台本をつくり上げることです。そのうえで指針となるのが「原文に忠実に、かつ大学生らしい訳づくりを」というコラプターズのモットーです。“大学生らしい”とは何でしょうか。今風の言葉を使うこと。執筆当時と現代日本の価値観のすり合わせを行うこと。それらを含め「等身大であること」だと私は考えております。我々大学生の、20年前後の人生で得た経験と語彙をもって、台詞だけが浮いて聞こえることのないよう、同じく大学生の役者が口にするにふさわしいような訳を心がけなければなりません。Corrupt、堕落させるという意味の名を冠したコラプターズには、「言葉を一度壊し、新しく創造する」ことが許されています。大学生らしく、新しく。しかしそれは原文が持つ意味やユーモア、凝らされた創意工夫を無視していいということではないのです。両者のバランスをとることが非常に難しく、また面白い点でもあります。 コラプターズの業務は個人作業の「下訳制作」、そして団体作業の「検討会」に分かれています。今年は早くも2月末から下訳制作がはじまりました。部員一人一人に原文の一部分が割り当てられ、各自でいったん翻訳を行います。そこでつくられた仮の訳を下訳と呼び、さらにこれを検討会にかけます。検討会では、部員が集まって下訳を読み、違和感やよりよい表現がないか意見を出し合います。登場人物の口調、下訳制作の段階では思いつかなかった言い回し、気づかなかった違和感、原文との解釈違いをここで修正し最終的な上映台本が完成するのです。 一つ例を挙げてみます。第二幕一場ベンヴォーリオの台詞です。Tut man, one fire burns out another’s burning. One pain is lessened by another’s anguish. Turn giddy, and be helped by backward turning. これをある部員が下訳したものがこちらです。『元気出せ、ロミオ。燃え上がった火がほかの火を消すように、新しい病がほかの病を軽くするんだ。お前18

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